Tourism passport web magazine

学校法人明浄大学 大阪観光大学

〒590-0493
大阪府泉南郡熊取町
大久保南5-3-1

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大阪観光大の学生や教員が運営する WEBマガジン「passport」

Osaka University of Tourism’s
Web magazine”passport”

「passport(パスポート)」は、観光や外国語、国際ニュースなどをテーマに、 大阪観光大学がお届けするWEBマガジンです。
記事を書いているのは大阪観光大学の現役の教授や学生たち。 大学の情報はもちろん、観光業界や外国語に興味のある方にも楽しんでいただける記事を定期的に公開していきます。

政府ではなく、機械が人間の衣食住を保障する世界

大学院の総合政策研究科というところで政策学を学んだことがある。今回のコラムでは、参議院議員通常選挙の後ということで、人間社会が選択すべき将来についての政策について考えてみる。なお政策学の核は意思決定論である。何を選択するかということに関係がある。

昨今、人間社会の将来が不確実ということがよく言われる。これまでのような社会のあり方は変わっていくだろうし、これまでのような社会のあり方を前提とした生き方はできないだろうというのである。ここまでは共通認識のようなものがあるらしい。

しかしながら、ではどういう社会になるのか、どういう社会にすべきかという点についての共通認識はないらしい。

この点、このコラムにおける結論を先取りすると、人間社会は将来次のような世界になる。すなわち、

1、まず政府ではなく、機械が人間の衣食住を保障する世界が到来し、
2、人間は衣食住のために労働をすることがなくなる世界が到来し、
3、通貨(お金)は不要となる世界が到来し、
4、人間は真に好きなことを行う世界が到来する。

以下、敷衍する。
 現在、筆者は大学に奉職している。大学は研究のほかに教育という役割がある。学生を教育して社会に送り出さなければならない。
  「これまでのような社会のあり方は変わっていくだろうし、これまでのような社会のあり方を前提とした生き方はできないだろうという共通認識」がある以上、漫然と、これまでのような社会のあり方を前提として教育を行い、学生を送り出すというわけにはいかない。
 なんらかの将来社会のモデルを前提に人材育成を行い、送り出さなければならない。
 この点、将来、機械が相当発達し、生活が便利になる一方、生身の人間に求められる職業能力が変化することが予想されている[総務省(2018)、山藤(2019)]。

これまでの発想でいけば、この変化に対応し、他の人と切磋琢磨し競争して、需要のある職業に就くことを目指すことを指導することになろう。生産性の向上が叫ばれ、機械や組織だけではなく、個人の生産性の向上も要求されてきた。デキる人が重宝されてきた社会があった。

デキる人とその帰結の例

・より短い時間でより多い仕事を処理する人 → より多くの就職機会とより多い報酬(お金)を得る

・より多くの言語でコミュニケーションできる人 → より多くの就職機会とより多い報酬(お金)を得る

しかし、現在私たちが直面している競争は、根本的には機械との競争である。この競争にはどんなデキる人でも勝てない。

我が国の将棋は生身の人間と機械との競争(共存)を見るための好例である。

「兄弟は頭が悪いので棋士になれずに東大へ行った。」という趣旨が語られるプロ棋士の世界でも、生身のプロ棋士は機械との対局で負けるようになった。

この現象は、生身の人間のすべての職業領域で発現すると思った方がよい。

では、私たちはどういう将来世界を選択するのか。

需要のある職種のパイを争奪する世界を選ぶのか。

それとも、発想を転換し、政府ではなく、機械が人間の衣食住を保障する世界を選ぶのか。

山藤(2019)は、職のミスマッチを解消し、人材流動化を進め、需要のある職種へと誘導する趣旨を述べている。
 しかしながら、当該文献では、2030年において、専門職が170万人不足となる一方、生産職90万人過剰+事務職120万人過剰と明記されており、差し引き40万人が過剰となる結果だが、その過剰となった「失業者」の行き先については、なんらの救済も示されていない。

このとき生身の人間の職域を保障するために、機械の発展を阻止するとかは、ナンセンスである。

そうすると、選択すべきは、「機械が人間の衣食住を保障する世界」となる。つまり、衣食住のために就職し労働する必要のない世界を構築しなければならない。この世界では、将棋が好きだから将棋を職とするように、真に好きなことを職にできる。旅が好きなら旅をなりわいとし、人のお世話(ホスピタリティ)が好きなら人のお世話をなりわいとすればよい。仕事量は自分で調節できる。半ば強要される過労死は絶無である。この世界では機械を動かすエネルギーも生産材料も機械が供給するから、財やサービスを得るための通貨(お金)は必須ではない。病気や犯罪は機械が撲滅(予防)済みである。

そういう世界を目指して学生を送り出したいと思う。もちろん、今日明日は、需要のある進路を目指し、需要のある職に就いてもらわなければならないが。

ところで、上記4つの流れのうち、「3」は、現在大半の通貨(お金)を支配している者によって、断固として阻止される可能性がある。
 私たちは、なんとなく納得させられて、需要のある職種のパイを争奪する世界を選ばされる可能性がある[総務省の動画でも通貨(お金)の存在が前提となっている]。

長くなったから、ここまでとする。

参考ウェブサイト:

総務省(2018)【イメージムービー】 Connect future ~5Gでつながる世界~(3分ver) https://www.youtube.com/watch?v=ArRWXopUHAQ (2019.07.26.)

山藤昌志(2019) 大ミスマッチ時代を乗り超える人材戦略 第10回(最終回)
FLAPサイクル形成に向けたロードマップ~2030年の人材マッピング~ 三菱総合研究所 https://www.mri.co.jp/opinion/column/trend/trend_20190111.html (2019.07.26.)

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