Osaka University of Tourism’s
Web magazine”passport”
「passport(パスポート)」は、観光や外国語、国際ニュースなどをテーマに、
大阪観光大学がお届けするWEBマガジンです。
記事を書いているのは大阪観光大学の現役の教授や学生たち。
大学の情報はもちろん、観光業界や外国語に興味のある方にも楽しんでいただける記事を定期的に公開していきます。
ステレオタイプのはなし
中国人留学生のYさんによると、「日本人の男の子は、怒らなくって優しい」そうです。
確かに、彼女のクラスメイトの男子学生たちは、意見が食い違って口論になったとしても、いきなり相手を怒鳴りつけるようなことはありません。
彼女は、周囲の学生たちが怒りの感情をすぐにぶちまけたりはせずに抑制的な態度をとる様子を見て、そう考えるに至ったようです。
このように私たちは自分が見聞きした経験にもとづいて、ある対象について特定のイメージを作り上げていきます。
これをステレオタイプといいます。
「日本人男性は優しい」「関西人はおもしろい」などのように、対象をタイプ別に分類して、その典型的な特徴を当てはめていく心のはたらきです。
ステレオタイプは個人的なルールにはとどまらず、同じ社会、文化で暮らす多くの人に「あるある!」と共有されるものです。
ただし、それはいつも正しいとは限りません。
血液型占いは日本ではよく知られているステレオタイプですが、科学的な検証によって血液型と性格の関連性は否定されています。
にもかかわらず日常会話では、「あの人はB型だからマイペースだ」のように、血液型から性格を解釈しようとする場面によく出くわします。
(そのたび私は「関係ないよ!」と否定しますが、それは私がB型で悪口を言われることが多いからではありません。)
この問題について、日本社会心理学会のWEBサイトhttp://www.socialpsychology.jp/jssppr/topics/bloodtype_socpsy/で関連する論文や書籍、WEB記事を紹介していますので、興味のある方はぜひご覧ください。
性別や人種、出身地などもそうですが、内容が正しいかどうかに関わらず、ステレオタイプは他者を理解するための有効な手がかりとして使われます。
人生には時間的、空間的な制限があるので、私たちは出会うすべての人とじっくりコミュニケーションをとり、理解を深めていくことは不可能です。
そこで、知らない人と会った時には、相手の断片的な情報にもとづいてステレオタイプに当てはめることで、素早くその人物像を把握するという効率的な方法をとっているわけです。
ステレオタイプは便利ですが、表面的な判断しか与えてくれません。
本当のことを知ろうと思ったら、まっさらな気持ちで、とことん相手と向き合うしかないのです。
(2014年1月初出 / 2019年7月加筆・修正)