Osaka University of Tourism’s
Web magazine”passport”
「passport(パスポート)」は、観光や外国語、国際ニュースなどをテーマに、
大阪観光大学がお届けするWEBマガジンです。
記事を書いているのは大阪観光大学の現役の教授や学生たち。
大学の情報はもちろん、観光業界や外国語に興味のある方にも楽しんでいただける記事を定期的に公開していきます。
英語をやさしくつかんで好きになろう!!
英語というと、すぐに入試や就職ということが言われます。そして半ば強制的に学ぶ形になります。でも、私たちはコンピュータではありませんので、「入試や就職に必要」とインプットされて、「了解。作業を始めます」などとはなかなかいきません。
●「好き」が心を起動する
そこで、少し視点を変えてみましょう。私はこれまで数千人の生徒・学生に英語を教えてきましたが、その中で突出して素晴らしい英文を書く人がいました。日本人の書く英語というのは、たとえトップレベルの生徒でも、かろうじて意味が通じる程度のものがほとんどですので、私はとても驚きました。でも、尋ねてみると彼には海外留学経験がありません。
では、いったい彼は、どのようにして英語を学んだのでしょうか───その答えは、彼が「大の洋楽ファン」だったということでした。洋楽が好きで好きでたまらない。だから、歌詞カードの和訳だけでは飽き足らない、どうしても元の英文の持つ意味、ニュアンスを理解したい、そう思って辞書やら何やらを使って懸命に調べたそうです。
これは一例に過ぎませんが、たとえば、映画やドラマ、アニメ、洋楽など、もしあなたに何か一つでも大好きなものがあれば、まずはそこから英語に触れていくことをお勧めします。本学でも、映画や洋楽を使った授業を組み入れています。
●文法はわずかで良い
つぎは、文法についてのアドバイスです。日本の英語教育は、5文型、現在分詞の形容詞的用法の後置修飾、状態動詞、自動詞、態の変換、分詞構文などなど、いまだに「文法用語漬け」の状態で、これが理由で英語が苦手になったり、嫌いになったりする人が後を絶ちません。
でも、文法は「形と意味」に注目するようにすると、そのほとんどが簡単に理解できます。
たとえば、makeに「①作る ②する」という意味があると考えると、文法の分析を一切しなくても、The news made me happy.=「そのニュースはした」→だれを?→「私を」→どう?→「ハッピーな気分に」となって、意味をクリアーに理解できます。しかも、「英語の語順」で。
文法をゼロにすることはできません。でも、従来の10%ぐらいまでには減らすことができます。じつは、これが過去30年間の私の研究テーマでした。あなたは、私がなぜそのような研究を始めたと思いますか───答えは、私自身が高校時代に英文法で大変苦労したからです。
●日本語を活用する
もうひとつのアドバイスは、「日本語を活用する」と英語はとても速く、深く学習できるということです。たとえば、和文に英単語を混ぜる(※)と、これまでに体験したことのない快適さで、週に150語ぐらいを覚えることができます。本学ではこの方法で単語を増やしている学生がたくさんいます。リーディングなども、設問を和文にするだけで、読むスピードや深さがまるで違ってきます。
(※)Ex.「quakeが町を襲って、大きなdamageをcauseした」(地震、被害、引き起こす)
●「答え」を攻める
また、私たちは、英語の勉強というと、ふつうは頭を絞って「問題を解く」→「答えを確認する」という流れで行います。しかし、これも発想を180度変え、まず「答え」を確認して、それから「その答えを含む英文」をリスニングしたり音読したり、ディクテーションするようにすると、早く正確に問題を解けるようになるだけでなく、4技能すべてが向上します。
●学習者にやさしいトレーニング法
最後に、最近よくAI(人工知能)という言葉を耳にしますが、これは人間の脳の働き方を参考にして作られたものです。人間の脳は、たくさんのことを一度に完璧に覚えるようにはできていません。70%ぐらいの学習を繰りかえす中で100%を達成するような仕組みになっています。本学ではこの点に配慮し、情報を分散することで学習の負荷(大変さ)を下げ、無理なく、確実に英語力が身に付くトレーニングを実施しています。
大阪観光大学 国際交流学部 池田 和弘
【補足】私は、英語の学習方法について、「日経ビジネスオンライン」というサイトでコラムを書いています。ご興味のある方は一度のぞいてみて下さい。検索ワードは私の名前(池田和弘)です。