おわりに

大学全体の卒業予定者の就職内定状況は、平成24年2月末で約80%である。学内調査によると、学生個々の就職活動における満足度合いは年々高まっており、本事業の効果が学生に浸透しつつあるとの実感を持っている。

また「社会人基礎力」を学士力に反映させる目的で行った、卒業生の就職先企業への調査結果を学内で公表することで、一般企業の求める人物像に対する学生の理解度合いはかなり進んだと考える。

その結果によれば、本学学生に求める能力として「他者に気配りができる」「チームの和を大切にし、他者と連携できる」「自ら進んで行動することができる」など、集団における調和性・規律性に係わる能力を求める傾向にあり、これは大卒全体に求める能力と大差ないと認識する。

本学学生を採用した企業においては、卒業生が「対人関係、対人面での協調性」「責任感・誠実さ」「仕事の理解力・判断力」に優れているとの感想を持つ割合が高いことがわかった。

一方で「外国語(英語など)の能力」「パソコン操作などの能力」について「どちらかというと、物足りなさを感じる」と回答した企業の割合が高い傾向にあることも判明した。

この結果により「外国語能力」と「パソコン操作能力」について、学生が結果を理解し、かれらの弱点改善やレベルの引き上げをサポートする体制の必要性を痛感した。学生自らが能力を認識し意欲を持って授業や課外においてレベルアップに取り組めるよう、さらに環境を整えていくことが求められる。

さらに学生の就職(内定)先企業との連携を継続し、本学学生に対して企業が求める個別の「基礎力」とはどういうものかの探求を続け、教育の現場に反映できるよう学内で検討しているところである。

本事業に対する学生の意見を聴取するために実施した「社会人基礎力アンケート」の結果によると、「学生生活を通じて身につけておくべき」「すべてが社会人として必要」「日頃から意識しておかなければ、一朝一夕にして身に付くものではない」という意見や「自分に身についていると思っていたが、就職活動でまだまだ身についていないと感じた」「基礎力が最も形成されるのはクラブ活動」という意見もあった。

「就職活動前と現在を比べて、自分の意識に変化があったと考える力は何か」の問いでは「実行力」が46%で、「就職活動を行う際、自分の身に付いていると就職に有利だと思う力は何か」の問いでも「実行力」が52%と突出している。

これは就職活動を通して、物事は計画するだけでなく実現させる力が必要だと感じざるを得なかったのではないか。就職活動前は、アルバイト経験程度で実社会を理解しているつもりであったのが、実際には自分の意識の甘さと就職活動の準備不足を痛感するばかりでなかったかと想像する。実体験における痛みを伴ってはじめて、失敗も成功も自分次第であることを体験できたのである。

どちらにしても就職活動直前の数カ月で身につくものではないことは確かであり、学生もその点は理解できている。

この問題を解決するための一つの方策として、学生全員への早期のキャリア教育実施がある。本学では入学初年次に開講しているが、残念ながら必修科目ではないため、学生全員の受講は困難であると言わざるを得ない。

別途、単位を伴わない就職支援行事は実施しているが、就職のノウハウ取得を目的とした学生が中心に参加しているのが現状である。

就職年次になって慌ててノウハウだけを支援行事で体得することと、キャリア教育を受講して社会人基礎力などを基本から学ぶことは別次元であるとの認識から、キャリア教育の履修を義務化するなど別の方策の検討が課題であると考える。

三年に及んだ本取組で得た実績をもとに、事業終了後も取組を学内で改良し、継続していく予定である。

学内での事業総括(報告会などの実施)において、学生のみならず教職員から得た意見や感想なども、総合的に判断し取組改善の材料として、継続するキャリア教育授業に主として役立てていきたいと考えている。