エッセーコンクール

第5回 - 受賞作品一覧

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金賞
山梨英和高等学校3年
保坂 美季
「サラダからスープに」

なぜ私はこの夏に、ロサンゼルスに向かっているのだろう。十一時間のフライトの間中、後悔の気持ちばかりが心に浮かんだ。受験生である自分への言い訳のように機内に持ち込んだ勉強道具は、鞄の中に入れたままだ。窓の外に見える白と青の広い空の間に、広大なアメリカの大地が迫ってきた。

三月、山梨と日本の文化を紹介する私のオリジナル劇「桃太郎 山梨編」の企画が、「国際理解のための企画コンクール」で最優秀賞に選ばれた。それから四ヶ月間、私はロサンゼルスでの公演に向けて、高三の上半期を脚本の制作や劇の準備で勉強もそっちのけ、疾風怒濤の日々を過ごし、気付いたら、私はもうアメリカの空の上だったというわけだ。

カリフォルニアの青い空と、照りつける太陽、そして一六時間の時差にめまいを覚えた。本番までの数日間、美しいトーランス市内で、公演に協力して頂いたロサンゼルス山梨県人会の方と、打ち合わせやリハーサルを重ねた。

会場の敬老引退者ホームは日系人のための施設だ。ホームに向かう車の中で、私は県人会の方からこんな話を聞いた。「ロスは人種のサラダボウル。私たちの県人会のような地域に根付いたコミュニティがたくさんある。支え合っていけるのは本当に心強いけれど、その裏には支え合わなければ生きていけなかった過去がある。日系人も、悲しい歴史を乗り越えてきた。おじいちゃん、おばあちゃんたちは、公演をとても楽しみにしているからね。」私は、夕焼け色に染まった広いハイウェイの景色と共に、この言葉を心に刻んだ。

満席のホールには、日系人のみならず、多くのアメリカ人の姿があった。武田信玄をモデルとした桃太郎を主人公に、富士山やほうとうが登場する新しい「桃太郎」を上演した。

公演の後は、出口で来てくださった方一人一人に折り鶴をお渡しした。「いつか日本に行ってみたい。」と笑顔のアメリカ人。そして、「日本旅行をしたような気分。素晴らしかった。」と、私の手を握り、英語で語ってくれた日系人のおばあちゃん。自分の目で見たことのない祖国、日本に思いをはせたのだろうか。私は胸がいっぱいになった。

歴史に翻弄され、辛い過去を持つ日系人、その三世、四世となるアメリカ生まれのおじいちゃん、おばあちゃんたち。彼らとの出会いは、私に歴史を学ぶことの大切さを教えてくれた。人種の隔てを越え、多くの人に受け入れてもらえた私の劇、それを裏で支えてくれたロサンゼルスのあたたかい日本人コミュニティに感謝の気持ちでいっぱいだ。

あれから二ヶ月。私はまたどこかに、新たな出会いを求めて旅をしたい気分だ。いつか世界中を旅して、その地に暮らす人々との対話から、世界を見つめ、問題と向き合い、それを乗り越える方法を見つけたい。ロサンゼルスは「サラダボウル」だった。でも、いつか世界が具だくさんのスープのように、互いが解け合い、それぞれの個性的な味を主張しつつ、受け入れ合ってひとつになれたらいいと思う。

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