エッセーコンクール

第3回 - 受賞作品一覧

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金賞
東京大学教育学部附属中等教育学校5年
今野 愛
「同じ時間の上で」

モルディブ唯一の空港であるマレ国際空港に着いたのは深夜だった。飛行機を降りたその瞬間に、私は鼻の奥まで海のにおいを感じ、そしてすぐに波の音が聞こえた。日本では見たことがないほど月が空のてっぺんに高く上がっているのを見て、私は自分が日本から遠く離れた国に来たということ感じた。私がモルディブを訪れたのは去年の夏休みのことである。たった一年前のことかとも思うし、もう一年も経ってしまったのかと思うと、寂しくて胸が痛い。小さい時にモルディブの海の写真を見て以来ずっと憧れを持ち続けた国に、あんなにも早く行けるチャンスが来るとは、思ってもみなかった。

着いた日の翌朝、起きて朝日に染まる海の色を見て、息を飲んだ。モルディブを楽園と呼ぶ人の気持ちが瞬時に理解できた気がした。海水は澄み渡っているのに、なぜか空よりも濃い青色だ。言葉にならないほどきれいだった。ただただ「きれいだね。」「本当にきれい。」と、それだけを繰り返し姉と話した。

滞在して数日ほどたったある日、私は偶然レストランで働くモルディブ人の男の子と仲良くなることができた。彼は他の島から船で働きに来ていると言っていた。たどたどしい英語で、彼は私に様々なことを話してくれた。毎日のように海に潜って魚を捕まえていること。休み時間にはみんなでサッカーをしていること。私が、虹なんて東京じゃ滅多に見れないよ!と言ったら、ここでは毎日見れるよ、ずっとここにいなよ!と言って、笑っていた。私にとって彼はモルディブの一部だ。あの素晴らしい国を思い出させてくれる。

日本に帰る一日前に、日帰り旅行という形でほかの島々を巡るツアーに参加した。モルディブの人たちが生活している島や、砂でできた無人島を一日かけて訪れた。真っ青な海に浮かぶ小舟で漁をしているおじいちゃんに会い、道ですれ違った女の子に挨拶をして、海岸に面するカフェでゆっくりと時間をすごしている人を見て、私は日本とは違う時間の流れというものを強く感じた。私と同じ時間の流れの中に生きているのに、こんな風に時が流れる場所があるんだと、新鮮な驚きと供に心底嬉しくなった。今、私は毎日を東京で過ごしている間に、私の友達はモルディブの真っ青な海のなかで生きていると、ふと気がつくことがある。そして世界の広さに純粋な驚きを覚えている。

今だったら、モルディブが楽園と呼ばれる由縁は決してその海の美しさだけではないということがわかる。本当の訳はきっと、そこに流れる時間の違いなのだ。 普段の自分とは違う時間の流れを知ること、これは旅をすることでしか得られない。違う文化、違う人々、そして違う時間を自分の体いっぱいに感じることができる。旅を通して感じたモルディブ。同じ地球上にモルディブのような場所があると思うだけで、それは私にとっての、生きていく希望となっている。

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